2009年12月27日日曜日

グラフィックデザイナー 野口久光の世界


作品をみれば「あぁ!」と思う、独特の書き文字と画風のデザイナー。往年のフランス映画を彩った傑作ポスターや、映画雑誌の表紙デザイン等が一同に会している。
野口久光を象徴するような手書きのタイトルに見られる独特なレタリングは、必要に迫られて生まれたものであるらしい。封切までに二転三転する邦題にポスターの書き直しを余儀なくされ、入稿ぎりぎりまで作業を行う為に、写植の校正がいらない手書きに落ち着いていったようだ。なんだか非常に親近感のわく話でもあり、昔からデザイナーはこういう具合に泣かされる運命だったんだなという諦念めいたものも心に去来した。
それにしても、普段仕事の時に、昭和30年代頃のレタリングの本からデザインのエッセンスを拾ったりしていたのだが、その本に納められていた映画タイトルのレタリングが、かなりの数、野口久光氏の作品であったことに初めて気がついた。よく見慣れた書体ではあったのだが、こうやってまとまった分量の仕事を見ると、改めて知らない間に記憶に刷り込まれていたかがわかり感慨深いものがあった。
生誕100年記念 グラフィックデザイナー 野口久光の世界
会場:ニューオータニ美術館
会期:2009年11月28日(土)~12月27日(日)
概要:1930年~50年代、フランス映画全盛の時代に芸術的なポスターでその魅力を日本に伝えた野口久光。本展では生誕100年を記念して約60点のフランス映画ポスターを中心に東京美術学校(現東京芸術大学)の卒業制作作品、映画スターのデッサン等を紹介し、グラフィックデザイナー野口久光の果たした役割を再確認していきます。