2009年12月25日金曜日

没後90年 村山槐多 ガランスの悦楽


展覧会名にある「ガランス」というのはフランス語で、槐多が好きな色の名前だそうだ。アカネソウという植物の根から採れる天然色素をもとにして作る染料系の茜色をでこう呼ぶのだという。
館内には、小品も含めた沢山の槐多の作品達で濃密な空間が出来上がっていた。一つ一つの絵の前で、彫像のように立ち尽くしてじっと見入っている人がいる。壁には絵のほかに、槐多の書いた文章作品から抜き出した印象的な言葉も掲示されていて、それも作家の人生を思う時に感慨深くさせる。
(ところどころに貼ってある解説はわかりやすかったが、時々文体が不統一なことがあって読み難かった。)
槐多は学生の頃、一人の美少年を思慕していたようだが、同時に自分自身の容貌を嫌悪している風が感じられた。確かに、画かれた美少年は高畠華宵の描いた美々しい青年を髣髴とさせる。が、展覧会入り口にあった槐多自身の肖像写真や、「自画像(油彩画・1916年)」、デスマスク等を見る限り、村山槐多も相当イイ男で、そんなに悲観しなければならない容貌とは思えない。
まぁしかし、美に命を懸ける芸術家としては、自分の美意識と容貌が相容れなかったとすれば、随分とやるせない気分になったことだろう。画家にとって自身の容貌よりは作品の出来不出来の方が重要と思うが、こういう葛藤が芸術への原動力になる可能性は否めない。

…久しぶりにmixiにログインしたところ、美術館博物館コミュの話題の中に村山槐多展に関する記述を発見! 気がつかなければ危うく見逃してしまうところだった。
江戸川乱歩が槐多の描いた「二少年図」を大事にしていたことから、乱歩ファンにはお馴染みの画家であるところの村山槐多。だが、残念ながら僕はその「二少年図」と他には近美にある何点かぐらいしか見たことがなかった。そもそも夭逝した画家だから、一体どのくらいの分量、作品が残っているものだろうかと興味津々で訪れたが、期待以上の面白さだった。
いつもは渋谷駅からアプローチすることの多い松涛美術館だが、今回初めて京王井の頭線神泉駅から歩いてみたところ、渋谷駅からよりぐっと近かったが、初めての道でちょっと迷ってしまった。
入館料は大人300円という親切さ。だのに、とても洗練された建物だ。いつ来てもぐっと来る。デートにもオススメ!
没後90年 村山槐多(むらやまかいた) ガランスの悦楽
会場:松濤美術館
会期:平成21年12月1日(火)~27日(日)【前期】
   平成22年1月5日(火)~24日(日)【後期】
概要:22歳で逝った夭折の天才画家・村山槐多(1896年~1919年)の油彩、水彩、デッサン、詩歌原稿、書簡など約150点を回顧し、早熟で多感な青年であった槐多の、詩と絵画に駆け抜けた生涯とその世界観をあますところなく、紹介します。