2009年12月26日土曜日

レベッカ・ホルン展 -静かな叛乱 鴉と鯨の対話


会場は二つに分かれており、前半でオブジェ的な作品群が紹介され、後半で映像作品が紹介される。
前半で紹介される作品は機械仕掛けで自動的に動く物が多い。が、動かす為の機械装置以外に使われている物が何となく生物を連想させるばかりか、機械自体の動きも生物の動きをトレースしたようなところがあったりして、単調な繰り返しの動作の中になんとなく有機的な印象がある。
意味する所まで考えなくとも、見ているだけで十分魅了されるような、奇妙な生き物のような作品達だ。
後半の会場では、前述したような装置を使ったパフォーマンスの記録や、展覧会のドキュメンタリー的記録、そして物語性のある映像作品らが字幕付きで上映されている。
特に何が上映されているかということを意識せずに、最初に入った部屋で丁度始まった作品を見たのだが、それなりに長い映像作品であったのに、すっかり魅了されてじっくり鑑賞してしまった。
「ラ・フェルディナンダ:メディチ邸のためのソナタ(1981年85分)」の魅惑的な屋敷やミステリアスな人々、そしてその世界に違和感無く馴染み存在するオブジェ達。なんだかエドワード・ゴーリーの絵が実体化したかのようだ。
「ダンス・パートナー(1978年47分)」も、往時のニューヨークの空気感を湛えながら、一方で不条理で神秘的な感覚に支配されている。当時作家が借りていた部屋を舞台に撮ったものだということだが、印象的な大きな窓から啓示を受けたのだろうか。
どちらも何か明確なストーリーがあるというわけでもないのに、何となくサスペンス映画を見たかのような後味があった。
他に、展覧会の背景を追ったドキュメンタリー「過去をつきぬけて(1995年55分)」も部分的に見ることが出来たが、前半会場で見ることができなかった《アナーキーのためのコンサート(1990年)》が閉じるところが映されたり、今回の展示に来ていない作品が映されていて興味深かった。作家自身が映画に出た役者と作品について語り合っている部分もある。

映像やオブジェの中に、様々な鳥や、鳥の羽が使われていることから、レベッカ・ホルンという人は鳥が好きなのだろうか、という素朴な感想を抱きながら鑑賞した。自分が鳥好きなものだから、少し邪道な鑑賞の仕方であったかもしれない。
今のドイツが30年前のドイツとどれだけ変わったか、変わっていないか、それはわからないが、いつか「ラ・フェルディナンダ」に描かれたようなドイツへ旅してみたいと思った。
オブジェ群もなかなかに見飽きないが、映像作品は更に見学に時間がかかる上見飽きないので、これから鑑賞に行かれる方はお時間に余裕を持ってお出かけになることをオススメする。
レベッカ・ホルン展 -静かな叛乱 鴉と鯨の対話
会場:東京都現代美術館
会期:2009年10月31日(土)~2010年2月14日(日)
概要:この秋、ドイツの現代美術家レベッカ・ホルン(1944 - )の、日本で初めての個展を開催することになりました。(中略)
本展は、パフォーマンスの記録から長編映画まで、映像の代表作全てと、絵画や彫刻の近作をあわせ、それぞれのメディアを関係づけながら展開してきた活動を本格的に紹介するものです。自然や人間の様々なエネルギーの流れを、目に見えるかたちに変換していく、独自の創造の軌跡を堪能するまたとない機会となるでしょう。